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子どもの頃の体験は、その後の人生に様々な影響を与えます。特に、子ども時代に繰り返し怖い思いをしたり、安心できる環境で生活できなかったりすると、その影響が大人になってからも続くことがあります。このような問題を理解するうえで重要になるのが「発達トラウマ」という考え方です。

本記事では、発達トラウマとは何か、そして一般的なトラウマと何が異なるのかについてお伝えします。

発達トラウマとは?

例えば、家庭の中で、親が突然怒り出すことが繰り返されている子どもがいたとします。

その子どもは、親が怒り出さないように、いつも親の表情や声の調子を注意深く観察するようになるかもしれません。少しでも機嫌が悪そうに見えると、自分の行動を変えたり、言いたいことを我慢したりすることもあるでしょう。

こうした反応は、その家庭で生活するうえでは役立つことがあります。しかし、成長して家庭を離れた後も、人の顔色が気になって仕方がない、相手の機嫌が悪いと自分の責任だと感じる、といった問題につながることがあります。

ここで重要なのは、子どもが怖い体験をしたということだけではありません。

怖い体験を繰り返しながら成長したことによって、人との関わり方や感情の扱い方などが影響を受ける可能性があるということです。

発達トラウマとは、子どもの発達過程で経験する、繰り返される脅威や虐待、ネグレクトなどの不適切な養育が、感情や行動、対人関係などの発達に広く影響することに注目した概念です。

なお、発達トラウマは研究や臨床で用いられる概念ですが、現在の診断分類では、独立した正式な診断名として確立されているわけではありません。

一般的なトラウマとの違い

トラウマというと、交通事故や災害、暴力などの出来事を思い浮かべる人が多いと思います。

こうした体験によって、強い恐怖や不安、フラッシュバック、睡眠の問題などが生じることがあります。

一方、発達トラウマでは、こうしたトラウマ症状に加えて、子どもの発達そのものへの影響が問題になります。

例えば、次のような違いがあります。


  1. 一般的なトラウマ:恐ろしい体験によって、記憶や感情、身体反応などに影響が生じる
  2. 発達トラウマ:発達の途中で繰り返し脅威などを経験することで、感情調整や対人関係、自己認識などの発達にも影響が及ぶ

ただし、両者が完全に分かれているわけではありません。子ども時代の単回のトラウマ体験が発達に影響することもありますし、繰り返されるトラウマ体験が成人期に起きることもあります。

発達トラウマの特徴は、トラウマ体験と発達が重なり合っているという点にあります。

発達トラウマは大人になってからどう現れるのか?

発達トラウマの影響は、必ずしも本人がトラウマとして自覚しているとは限りません。

例えば、次のような特徴として現れることがあります。


  1. 人の表情や機嫌が過剰に気になる
  2. 自分の気持ちや意見を表現することが難しい
  3. 感情が急激に強くなったり、反対に感じにくくなったりする
  4. 人を信頼することや、親しい関係を維持することが難しい
  5. 自分には価値がない、何か問題があると感じやすい

こうした特徴は、発達障害やパーソナリティ障害などで見られる症状と似ている場合があります。

そのため、現在の症状だけに注目すると、子ども時代の体験との関係が見過ごされることもあります。

ただし、上記の特徴があるからといって、必ず発達トラウマがあるというわけではありません。また、発達障害と発達トラウマが併存することもあります。

発達トラウマの影響は変わらないのか?

ここまで読むと、子ども時代の体験によって、その後の人生が決まってしまうように感じるかもしれません。

しかし、そうではありません。

子どもの発達は、生まれ持った特性だけでなく、周囲の環境や人間関係からも影響を受けます。そして、私たちの感情の扱い方や人との関わり方は、大人になってからも変化する可能性があります。

例えば、人の顔色をうかがうことで自分を守ってきた人が、安心できる人間関係を経験する中で、自分の気持ちを少しずつ表現できるようになることがあります。

発達トラウマによって生じた問題を理解する際には、過去の環境に適応するために身につけた反応が、現在の環境ではかえって生活を難しくしている可能性があるという視点が役立ちます。

そして、その反応は必ずしも変えられないものではありません。

本記事のまとめ

本記事では、発達トラウマの定義と特徴についてお伝えしました。

発達トラウマは、子ども時代の繰り返される脅威や不適切な養育などが、感情調整、自己認識、対人関係などの発達に影響することに注目した概念です。

一般的なトラウマとの大きな違いは、トラウマ体験による症状だけでなく、その体験をしながら成長してきたことによる影響も考える点にあります。

ただし、子ども時代に困難な体験をした人が、必ず発達トラウマによる問題を抱えるわけではありません。また、発達への影響があったとしても、その後の経験によって変化する可能性があります。

次回は、発達トラウマと一般的なトラウマ、複雑性PTSDとの違いについて、さらに詳しくお伝えします。