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タカ心理学博士の考え方:心理援助について PHILOSOPHY

NEXTカウンセリングでは、カウンセリングを提供するカウンセラーの効果を高めるために、スーパービジョン制度を取り入れています。本記事では、カウンセラーの効果とは何か、そしてそれを高めるスーパービジョンとは何かをお伝えします。

カウンセラーの効果

相談者の口からよく聞くことがあります。

「カウンセラーも人だから合う合わないがある」

一口にカウンセラーと言っても、みんな同じではないことは、単純な事実です。ただ、合う合わないだけ以上に効果に影響するものがあることも分かっています。欧米のカウンセリング効果研究では、カウンセラーの能力によって、効果が明確に違うことが分かっているのです1。そして効果的なカウンセラーの特徴も分かっています。まずは、どんなカウンセラーが効果的であるかをお伝えしましょう。そしてカウンセラーによって、どの程度効果に違いが出るのかをお伝えしましょう。

ではどのようなカウンセラーが効果的なのでしょうか。その特徴を以下にまとめました2

まずは言葉の流暢さから。カウンセラーに限らないかもしれませんが、言葉が巧みであることが1つの特徴です。滑らかに言葉が出てくることは、それだけ反復されている(経験が積まれている)ことが示唆され、説得力も高まります。次に暖かさと共感。これは合う合わないに関係しそうな、カウンセラーの特性(性格)と思われがちですが、TIPモデルの記事でもお伝えしましたが、具体的に高めていける特徴です。暖かく共感的なカウンセラーには、カウンセリングに絶対必要な「安心安全」が伴います。

暖かさと共感にも関連しますが、次の特徴は感情の表現。これは暖かさと共感、説得力とも関係してきます。カウンセラーが感情を表現するということは、腹の中を見せるということで、表裏がないことを示します。説得力は非常に重要です。カウンセリングを「説得」のサービスであると考える学者もいるくらい、相談者は説得されて癒やされていく部分も大きいのです。

カウンセラー自身が希望を持っていなければ、相談者も希望を持てません。どんなに難しい局面になろうとも、希望を持って前向きに関わることが効果につながります。感情の表現(裏表なし)や一貫したカウンセリングの提供が、説得力としても働くでしょう。

そして最後に、専門家としての自己懐疑と改善への努力は、多くの人に見逃されている特徴であると私は考えます。カウンセリングという密室で行われる行為に対して、誰も評価してくれる人はいません。カウンセラーは自分がしたことが全て正しいと自分自身を容易に洗脳できます。でも多くの場合、カウンセラーがすることの多くが間違っているのです。それにその人本人が気がつくしかありません。気がつけば改善をすることができます。

以上が効果的なカウンセラーの特徴ですが、これらの特徴を高めていく作業がNEXTカウンセリングが実施しているスーパービジョンです。

カウンセラーの効果を高めるスーパービジョン

スーパービジョンは、どんな業界でもある学びの行為です。より経験を積み、より知識のある者が、経験が薄かったり知識の少ない者に対して、客観的な事実に基づいて指導をする行為です。例えば、企業における上司と部下の関係は、それに近いものがあるでしょう。またコーチと選手という関係もそれに近いかと思います。

前述の通り、カウンセラーは密室で働き、守秘義務があるためそのパフォーマンスは誰にも明かされません。よって、カウンセラーのパフォーマンスは評価されず、改善を求められず、改善が起きないのが実情です。専門家としての自己懐疑を持たない限り、改善は起きません。がっかりするような結果を示した研究3では、カウンセラーの効果は時間が経つほど低下していくことがわかりました。常識的に考えると、経験を積めばそれだけ能力も上がっていくものだと思うし、多くのカウンセラーがそのように誤解をしています。能力の低下の大きな1つの理由が、自身の間違いに気がつかなかったり、自身の欠点を改善しないことにあるでしょう

NEXTカウンセリングでは、ここに着目し、カウンセラーが担当の相談者との間で行うカウンセリングにおける問題点を改善する努力をしています。スーパービジョン制度を導入し、カウンセラーのパフォーマンスを定期的にチェックし、スーパーバイザーとカウンセラーが定期的に話し合う機会を設けています。スーパーバイザーは、録画されたセッションを通じて、カウンセラーがどう行動し、どう反応したかを客観的に見て、カウンセラーが練習すべきメニューを作ります。それに従いカウンセラーは特定の練習をし、問題のあったセッションでは(上手く)できなかったことを、次のセッションではできるようにしてカウンセリングを提供するのです。私はこれを「意図的な練習」と呼び、これが唯一カウンセラーとしての効果を高めていく方法4であると考えています。


本記事のまとめ

  • 合う合わないだけでなくカウンセラーの能力は効果に影響をする
  • 効果的なカウンセラーにはいくつかの特徴がある
  • カウンセラーは自分では間違いに気が付きにくい
  • スーパービジョンはカウンセラーの改善すべき点を見出す
  • 意図的な練習によりカウンセラーは能力を高めることができる
  • NEXTカウンセリングでは、意図的な練習を含めたスーパービジョン制度を取り入れている
  1. Miller,Hubble, & Chow (2020) ↩︎
  2. Wampoldら(2017)を参考に作成 ↩︎
  3. Goldbergら(2016) ↩︎
  4. Rousmaniereら(2017) ↩︎