LOADING

心に効く最新の情報 BLOG

本記事では【前半】トラウマ症状について専門的な知識をご提供しています。本記事では大人の症状のみに言及をしており、子どものトラウマ症状に関しては、別の記事で紹介しています。【後半】では、トラウマの治し方に関しての情報をご提供します。

【前半】トラウマとは

まずトラウマ(外傷)とは何かを明確に定義しましょう。

”害や脅威を含み、長期的に幸福感(身体・感情の健康や良好な社会性など)を損なわせる出来事や状況で生じるものがトラウマ(外傷)である”(SAMHSA, 2012, p. 2を参考に作成)。

つまり身体や感情に害のある、あるいは恐怖が伴う出来事や状況によって、心に付いた傷のことを指します。この傷によって、トラウマ体験者は、脳が以前のように働かなくなり、体や心の健康を損なうばかりでなく、人間関係が悪くなったり、その人の精神世界(宗教観など)の健康を損なわせるものです。

日本では、多くの人が地震体験にさらされます。直接地震体験をした人は、地震や津波に恐さを感じ、それらがまた来るのでないかという不安を感じます。後述しまずが、その体験は身体と感情に悪影響を与えます。脳機能のバランスが崩れ、冷静に考えられなくなったり(考えへの影響)、感情のコントロールが難しくなったり(感情への影響)、眠れなくなったり(行動への影響)、また他人と関わりたくなくなったり(対人関係への影響)、心の中の安全だった世界が危険なものであると確信したり(スピリチャリティへの影響)という問題が生じます。

また間接的に地震体験をした人にも、似たような影響が生じることもあります。例えば、何度もニュースや映像に暴露され、地震への不安だけでなく、自律神経機能が悪くなって体調を崩したり、抑鬱状態になったり、パニック発作を起こすようになったり、人との関係で問題を起こすようになったり、という相談者の話をしばしば聞くことがあります。

その他、様々な出来事や状況でトラウマが生じることもあります。体験者の特性(長期的に続く傾向で性格と言っても良い)と状態(変化する一時的なもの)によって、どんな出来事や状況でトラウマが生じるかは様々です。近年では、次に紹介するトラウマ症状を部分的に呈するような「プチトラウマ」に悩み相談に来られる相談者が後を絶えない傾向にあります。例えば、上司からの1度の叱責に対して長期的に不安を感じたり、過去にクライスメイトから言われた一言に対して、大人になってからもイライラしたり、などです。

トラウマ症状はTPO(時間・場所・状況)そして個人(特性や状態)によってその重篤ども様々ですが、概していることは、生じた傷に対して生じる適切な反応です。つまり、トラウマ体験後の症状は、心の病気ではありません。さらに言うと、これらは専門的な介入がなくとも自然に治癒されていくこともしばしばあります。症状の変化については、以下のリンク(トラウマ症状の変化)を参考にしてください。

以下①直後に生じる症状と②時間が経ってから生じる症状を「感情」「思考」「身体」「行動」「精神世界」に分けて、より細かな症状をご紹介します。


リンク:トラウマ症状の変化

【前半】直後に生じるトラウマ症状

トラウマ体験初期の反応は一般的に、疲労感、混乱、悲しみ、不安、焦り、麻痺した感覚、解離(意識、記憶、考え、感情、知覚体験、行動、身体のイメージが切り離されて感じられる)身体的な覚醒、鈍くなった感情が含まれます。より重篤な症状は、安静状態にならない、重篤な解離症状、侵入的な想起(勝手に思い出されること)などが挙げられます。

時間が経ってから生じる症状として、一般的なものは、疲労感、睡眠障害、悪夢、再びトラウマ体験が起こることへの不安や恐怖、フラッシュバック(トラウマ体験が想起されること)への不安、うつ、トラウマに関連する感情、感覚、活動の回避が含まれます。

直後に生じる症状(感情)

・麻痺した感覚/切り離された感覚
・不安や恐怖
・罪悪感
・トラウマ体験が終わったことに対する良い興奮
・怒り
・悲しみ
・無力感
・現実感の低下や離人(自分から離れて自分を見ている感覚)
・見当識障害
・コントロール感の喪失
・否認
・薄れた感情
・圧倒される感覚

直後に生じる症状(思考)

・集中困難
・反芻(堂々廻りの考え)や止まらぬ思考(トラウマ体験を何度も再現するなど)
・時間・空間知覚の障害(時間がゆっくりと感じられたり、スローモーションで感じられる等)
・記憶障害(トラウマ体験の重要な部分を思い出せない等)
・強い被害者意識

直後に生じる症状(身体)

・吐き気や消化器系の問題
・発汗や震え
・失神
・筋肉のられない震え
・高まった心拍、呼吸、血圧
・強い疲労感
・驚愕反応(びっくりしやすい)
・離人

直後に生じる症状(行動)

・驚愕反応
・落ち着かなさ
・睡眠や食欲の問題
・自己表現の困難
・口論の頻発
・アルコール、ドラッグ、タバコの頻繁な使用
・引きこもり
・回避行動

直後に生じる症状(精神世界)

・祈りや参拝行為の頻度や程度の増加
・他人に対する信頼(他人は手助けしてくれる等)の変化
・自己効力(自分は物事を達成できるという自信)の喪失
・人間に対する絶望
・人生に対する考えの変化(公平、安全、良い、予測可能等)

【前半】遅れて生じるトラウマ症状

時間が経ってから生じる症状として、一般的なものは、疲労感、睡眠障害、悪夢、再びトラウマ体験が起こることへの不安や恐怖、フラッシュバック(トラウマ体験が想起されること)への不安、うつ、トラウマに関連する感情、感覚、活動の回避が含まれます。

遅れて生じる症状(感情)

・イライラや敵意
・うつ
・気分の不安定さ
・不安(恐怖症や全般的な不安)
・トラウマ体験再現に対する恐怖
・グリーフ反応
・恥
・もろさや無防備さの感覚
・感情的無関心(親密な人との関係、自分に対する語り、トラウマ体験の語りなどへの無関心さ)

遅れて生じる症状(思考)

・記憶の侵入的な想起(ひとりでに思い出される)やフラッシュバック
・それ以前のトラウマ記憶の想起
・自責
・トラウマ的出来事への執着
・決断困難
・おまじない思考(特定の行動が今後のトラウマから守ってくれる等)
・感情や記憶が危険であるという信念
・トリガーの一般化(さらに幅広いことやものがトラウマ記憶を思い出させるようになる)
・自殺に関する考え

遅れて生じる症状(身体)

・睡眠障害/悪夢
・身体化(身体の痛みなどへ対する過度な着目や心配)
・食欲と消化機能の変化
・風邪や感染症に対する免疫の低下
・継続する疲労感
・コルチゾール(ストレスホルモン)量の上昇
・過覚醒
・心臓、肝臓、免疫、肺への長期的な健康上の影響

遅れて生じる症状(行動)

・思い出させるものを避ける
・社会的な関係性への支障
・活動性の減少
・リスクのある活動への関与
・アルコールやドラッグの使用
・引きこもり

遅れて生じる症状(精神世界)

・疑問(なぜ自分に?等)
・皮肉的な物事の考え方
・自信の増加(このトラウマ体験を乗り越えたのだから、どんなことでも乗り越えられる等)
・目的の喪失
・信仰や強く信じていたものに対しする考えの変容
・無力感
・優先順位の再設定
・人生の意味や意義の再定義
・(トラウマ体験に適応するための)人生における思い込み(当たり前だと思っていたこと)の再考

【前半】トラウマ関連の心の病

以上トラウマ体験に伴う症状をお伝えしましたが、多くの場合、時間と共に症状は軽減しなくなっていきます。しかし時間に伴って症状の軽減や消失がない場合、あるいはトラウマ症状の重篤度が高い場合、医学的な注目が必要になり、心の病気として捉えられています。

トラウマ症状が続いたり重篤な場合「ASD(急性ストレス障害)」「PTSD(外傷後ストレス障害)」そして「CPTSD(複雑性外傷後ストレス障害」として医学的に定義されます。本記事では、トラウマ症状に関連して、ASDとPTSDについて触れ、CPTSDはASD/PTSDと性質が大きく異なるため、別の記事でご紹介したいと思います。

ASD(急性ストレス障害)

ASD(急性ストレス障害)は、通常単一のトラウマ体験から4週間以内に生じる、ストレスに対する自然な反応です。苦痛や支障がもたらされますが、この診断を受けた多くの人が、トラウマ体験から1ヶ月以内に症状の軽減や消失を体験します。

明確な診断の基準は、DSMマニュアル(以下リンク)を参照していただければ正確ですので、ここでは5つの大きな症状のみに触れておきます。

1)侵入症状
侵入症状とは、トラウマ体験を、改めて(頭の中で)体験する症状を指します。日中に思い出されたり、夜に夢に見たりすることを通じて、部分的にトラウマ体験を再度体験する症状です。カウンセリングの中で注目するのが、身体的な再体験です。意識では思い出すことがないので、理由もわからず身体的な再体験(多くの場合は何となくの不快感やソワソワ感、結果として生じる具体的な自律神経系の症状)してしまうことです。中には、意味もわからず身体の不調が起きるので「何かおかしいのでは」と思い詰め、パニック発作を起こす方もいます。

2)ネガティブな気分
トラウマ体験後、楽しさ、嬉しさ、喜び、幸福感、満足感、愛情などのポジティブな気分を味わえなくなることがあります。

3)解離症状
解離症状とは、脳の情報処理に不具合が生じるため、通常まとまりのある体験をしている私たちの体験が、部分的に体験されなくなる(切り離される)症状を指します。記憶と切り離されるので、特定のことが思い出せなくなったり、現実感と切り離されて、霞の中にいるような感じがしたり、などです。

4)回避症状
回避とは、避けることを指します。ASDでは、トラウマ記憶を思い出させるもの全てを避ける症状が現れます。よく誤解が生じるのは「向き合いたくないだけ」と周囲からとらえら得てしまうことです。これは意志や態度の問題ではなく、避け難い症状の1つです。

5)覚醒症状
トラウマ体験は危険な体験です。危険なため身体は興奮しますが、その興奮が冷めず(あるいはまた来るのではと予期するので)身体的な興奮が続きます。寝られなくなったり、イライラしたり、集中できなかったり、またはびっくりしやすくなったりする等が覚醒症状です。



PTSD(外傷後ストレス障害)

PTSD(外傷後ストレス障害)は、トラウマ体験から1ヶ月以降もトラウは症状の軽減や消失が生じない場合に診断されます。トラウマ体験後に最も診断されやすい状態ですが、PTSDの症状は部分的に他の状態(例えばうつ病)にも見られます。

明確な診断の基準は、DSMマニュアル(以下リンク)を参照していただければ正確ですので、ここでは5つの大きな症状のみに触れておきます。

1)侵入症状
ASDで紹介した通り、侵入症状とは、トラウマ体験を改めて(頭の中で)体験する症状を指します。これは自発的に思い出される場合も、何か思い出されるものを見聞きしたことをきっかけに、触発されて思い出すこともあります。

2)回避症状
思い出す、思い出されることに非常に苦痛を感じるため、PTSDでは、トラウマ記憶を思い出させるもの全てを徹底的に避ける症状が現れます。交通事故を起こしてしまった人が、なかなかその場に(必要があっても)いけないで困っているという相談は数多く受けたことがあります。

3)ネガティブな思考と気分への変容
侵入症状や回避症状が伴うため、トラウマ体験が歪んだ形で捉えられ、信じられるということが生じます。出来事の一部だけしか覚えていなかったり、事の原因を非現実的な形で捉えていたりということが生じます。またASDのようにポジティブな感情を体験できないだけでなく、恐怖、怒り、罪悪感などネガティブな感情が継続します。

4)解離症状
解離症状とは、脳の情報処理に不具合が生じるため、通常まとまりのある体験をしている私たちの体験が、部分的に体験されなくなる(切り離される)症状を指します。記憶と切り離されるので、特定のことが思い出せなくなったり、現実感と切り離されて、霞の中にいるような感じがしたり、などです。

5)覚醒症状
トラウマ体験は危険な体験です。危険なため身体は興奮しますが、その興奮が冷めず(あるいはまた来るのではと予期するので)身体的な興奮が続きます。寝られなくなったり、イライラしたり、集中できなかったり、またはびっくりしやすくなったりする等が覚醒症状です。



【後半】トラウマの治し方

前述の通り、トラウマ体験後のトラウマ症状は自然に改善していきますが、日常への支障度合いが高い場合「治す」という選択肢を検討するのが現実的です。【後半】では、トラウマ/PTSDを治していくことについて、お伝えします。

ここからは筆者(Dr.Taka)の経験も含めて、どのようにトラウマ症状/PTSD症状を治していくのかを紹介します。ここでご紹介する内容は、前提として「病院やカウンセリングなどの手立てを活用する」内容です。自分1人で治すということには言及していませんので、そういった理解で続きをお読みください。

まずはスタンダードな治し方(心理療法)をご紹介しましょう。そして次にそれらより望ましく、経済的、時間的、労力的なコストの低い治し方をご紹介します。

スタンダードなトラウマの治し方

2017年のアメリカ心理学会(APA)のガイドラインをまずはご紹介します。APAはカウンセリングの分野において、とてつもなく大きな力を持った組織です。日本では医学会が精神医療を牛耳っていますが、米国ではAPAは、医学会と同等の力を持つと言われています。そんなAPAのガイドラインは、カウンセリング/臨床心理の学生やカウンセラーにとって、とても影響力のあるものです。

そのガイドラインによると、PTSDに対しては認知行動療法(CBT)が推奨されています。また他に強く推奨されているもの、認知処理療法、認知療法、暴露療法、は全て認知行動療法系の方法です。これらが推奨される根拠は、最も研究され、効果があったと論文で紹介されていることにあります。効果がなかった論文は掲載されない傾向なので、誤解を恐れずに言うと、一番研究されやすい方法だからと言えるでしょう。つまり、推奨されている方法と、効果にはあまり関係がないと言えます。

APAのガイドラインに含まれているも、推奨の度合いがやや低いものがEMDR(眼球運動を使った方法)です。ガイドラインではほぼ言及されませんが、昨今流行りの幾つかの方法としてTFT、ソマティック・エクスペリエンシング、そしてNEXTカウンセリングで積極的に取り入れているブレインスポッティングなどが、効果の期待できる方法として、日本でも多くのカウンセラーに活用されています。

望ましいトラウマの治し方

方法自体の効果はともかく、トラウマに対して確立した方法があり、それらを取り入れたカウンセリングには、ある一定の効果は認められています。しかし、これらの確立されている方法(ブレインスポッティングを除く)にはいくつかの問題点があります。

トラウマの一般的な治し方の問題点

1・対象の問題:ある程度落ち着いている人が対象となる

2・経済・時間・労力の損失問題:落ち着いていない人には"安定化"の取組みが最初に行われる

3・効果の問題:それらの"安定化”自体に効果は認められていない

1・トラウマの取り組みは落ち着いている人に制限されがちです。上記の通り、トラウマ体験には直後からトラウマ症状が伴います。トラウマ体験のために強い症状を呈している人は、トラウマ記憶の処理が困難であると考えられます。それぞれの方法によってその説明は異なりますが、おおかた共通しているのが、強い症状を伴うと冷静さが失われる(感情・行動の制御が困難)ため、トラウマ記憶に触れると、再体験をするだけ、あるいは再体験をして余計に苦痛を感じるだけになってしまうためです。

トラウマ記憶は、身体を大きく興奮/鎮静させる力があり、身体が動揺している状態では、大脳新皮質による感情と身体の制御がなされなくなります。平和的解決のために話し合うのは、今この場を生き抜いてからすることだ。そういった状態になるためだと考えられています。

2・では、落ち着きがない人はトラウマの取り組みができないのか。そうではありません。ただし、お金の時間とエネルギーを注いだ上で、落ち着くための取り組みが先に課されます。そういった取り組みを”安定化”と呼びますが、それには一般的に、リソースの開発、グランディング(地に足がつくような感覚を得る)、個人史の総合的な聴取、具体的な方法への準備などが含まれます。では、この取り組みにどのくらいのお金、時間、エネルギーが必要なのでしょうか。

これは答えるのがとても難しい問題です。誰に聴いても明確な数字は出てきません。「人によって違う」と言う答えが精一杯であるのが現状です。なので数回で安定化が完了するとカウンセラーに捉えられる場合もあるし、数年たってもまだ安定化を続けないといけないと捉えられる場合もあります。概して言うと、トラウマ症状/PTSD症状が強ければ強いほど、トラウマの取り組みは「まだ早い」とカウンセラーには捉えられます。

3・そういった投資も、必要であれば仕方がないことです。一方で、トラウマの研究は始まったばかりであり、特に”安定化”が望まれるトラウマ(これについては別記事でお伝えします)については、ほとんどデータがありません。”カリスマのセラピストが言うから”だとか”方法の手順に含まれているから”という理由で、安定化の必要性が鵜呑みにされている傾向があることは免れません。そして近年の研究では、安定化を含めたトラウマ療法と安定化のないトラウマ療法が比較検討され、その結果、それらには統計的な有意差がないことがわかりました(van Valietら, 2021)。つまり、膨大なお金、時間、エネルギーを費やしても費やさなくても、効果に差がないということです。私の経験を通じても、同意できる研究結果です。

では、どうするのが望ましいのでしょうか。科学で見出されたデータをちゃんと考慮すると、一番現実的な方法は”トラウマ体験直後に共感的にその体験を誰かに聴いてもらう”ということです。これに対しては次の2つの理由があります。

”安定化”はあってもなくても効果に差がない

トラウマ療法とそうでないものには効果に差がない

上記の通り、”安定化"はあってもなくても効果に差がありません(もちろん、それを好む好まないはあると思います)。なのでトラウマ体験後、すぐに誰かに話を聴いてもらうのが良いでしょう。そして、ただ聴いてもらうだけではなく共感的に聴いてもらうことが効果的だと言えます。共感的に聴いてもらえることで、"安定化"を重要視する方法が特に主張する”安心・安全”の感覚が、一時的であったとしても生じます。すると、それだけでトラウマ記憶を冷静に精査することが可能になるのです。

【前半】でも触れましたが、トラウマ体験後はトラウマ症状を呈しますが、時間の経過で症状の軽減が認められない場合、症状は自ずと拡大します。経験的に言うと、トラウマの自己拡大がなければトラウマは必ず自己消滅するのです。自己拡大を止めることが、トラウマを治すということにおいては重要であり、最も効果的な方法です。

NEXTカウンセリングは、このような考えに基づき、カウンセラーの”共感”を強めるTIPモデルを取り入れ、共感的に話を聴くことで、トラウマの自己拡大を食い止める取り組みをしています。トラウマ体験後、それが慢性化するかしないかを待ってから援助を提供するのではなく、慢性化するかもしれない問題の芽を早急に刈り取ることで、早期にトラウマの解消を目指しています。

本記事のまとめ

本記事では【前半】トラウマ症状について、そして【後半】トラウマの治し方について紹介しています。トラウマ(外傷)は、大きな害を伴い幸福感を長期的に損なわせるような体験に伴って生じる心の傷です。トラウマ症状は大きく体験直後の症状と時間の経過に伴った症状と二分できます。

症状の範囲は広範であり、感情、思考、身体、行動、そして精神世界にまで及びます。これらの症状はストレスに対する自然に生じるものですが、継続したり、あるいは程度が強い状態は、医学的に注目される必要があります。

トラウマ症状の継続や重篤なケースはASD(急性ストレス障害)とPTSD(外傷後ストレス障害)としてよく診断されます。2つとも似た状態ではありますが、ASDの基準に当てはまる多くの人が、1ヶ月以内に症状が軽減し、消失します。症状が1ヶ月以上続く場合、思い出すことへの苦痛や回避から、出来事に対する偏った見方が定着します。

トラウマ症状/PTSD症状に対して、ガイドラインで推奨されている研究された確立した方法、研究されておらずとも現場で効果が認められている確立した方法がいくつかは存在します。しかしトラウマを治すことに関して、まだ十分にデータが積み重なっていないため、トラウマに苦しみ手助けが必要な人たちに、経済、時間、労力の負担を強いることになっています。

NEXTカウンセリングでは、トラウマ症状/PTSD症状の自己拡大を早期に防ぐことが、トラウマの自己消滅につながるという最新の見解を取り入れ、共感を基盤にした相談者への負担の少ない援助を提供しています。

参考文献

アメリカ合衆国保健福祉省薬物乱用および精神保健サービス局 (2014) Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK207201/pdf/Bookshelf_NBK207201.pdf
コネチカット州(2016) Trauma-InformedCarePracticeGuide:https://portal.ct.gov/-/media/dcf/policy/bpguides/21-1-pg-traumainformedcare.pdf
Wampold, Imel, Laska, Benish, Miller, Fluckiger, Del Re, Baardseth, and Budge, (2010). Determining what works in the treatment of PTSD. Clinical psychology review. Vol.30(8). pp.923-933.
Watkins, Sprang, and Rothbaum, (2018). Treating PTSD: A Review of Evidence-Based Psychotherapy Interventions. Frontiers in neurobehavioral science. Vol.12. pp.258.
van Vliet, N. I., Huntjens, R. J. C., van Dijk, M. K., Bachrach, N., Meewisse, M. L., & de Jongh, A.(2021). Phase-based treatment versus immediate trauma-focused treatment for post-traumatic stress disorder due to childhood abuse: randomised clinical trial. BJPsych Open, 7(6), e211. https://doi.org/10.1192/bjo.2021.1057