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55歳男性が大型貨物自動車を飲酒運転し、普通自動車に衝突して、同車を炎上させ、幼い姉妹を死亡させた

福岡県警察交通企画課

この事例に限らず、飲酒運転による痛ましい事故は後を絶えません。筑波大学の(少し古いですが)調査によると、アルコール依存症患者の多くが飲酒運転の経験があり、6割が事故起こしたことがあるようです(丸山ほか,2003)。

アルコール依存症に限らず、アルコールの乱用は多くの問題をもたらします。今回の記事では、逆境的小児期体験(ACE)と、アルコール含む薬物使用の関連についてご紹介します。

ACEと薬物使用

薬物使用は、身体的、精神的な健康の悩みにつながることが分かっています。アメリカの統計では、年間$400,0000,000(60兆円以上)のコストとなっていることが報告されています。

 小児期の難しい体験が、なぜ薬物の使用に関係があるのか。それには、ストレスと制御が関係しています。簡単に述べると、ACEは身体が処理すべきストレス値を高めることが分かっています。高いストレス値においては、自分自身のコントロールが難しくなり、そのために薬物(アルコール、タバコ、大麻など)に手を出しやすくなる、あるいはやめられなくなると考えられています。

近年に行われたACEと薬物使用のメタ分析研究(Zhu, et al., 2023)では、102の研究(90万人以上の被験者)の分析から①タバコ②アルコール③違法ドラッグ、そして④大麻使用へのリスクが高まることを見出されました。以下では、それら3種類の薬物使用とACEの関係についてもう少し具体的にご紹介します。

ACEと喫煙

減少傾向とはいえ、日本でも喫煙は日常生活の至る場面で見られます。日経新聞の記事では、25%の男性、7%の女性が喫煙をしており、そのコストは毎年5兆以上とも言われています。喫煙は体に悪いという認識を多くの人が持つ中でも、上記のよう、高まったストレス値により自制の効かない状態になると、タバコに手を出してしまうのでしょう。Zhuらは、ACEがある人は、そうでない人よりも1.8倍喫煙傾向にあることを見出しました。

ACEと飲酒

冒頭の飲酒運転のみに限定されませんが、飲酒はさまざまな問題をもたらします。それは飲酒の程度によって生じるも異なります。Zhuらは「問題あるアルコール使用」と「アルコールの乱用」に分けて分析をしましたが、ACEがある場合、問題あるアルコール使用は1.8倍、アルコールの乱用は1.5倍でした。

ACEと違法ドラッグと大麻の使用

Zhuらの報告では、違法ドラッグの使用は、ACEがある人はない人と比較すると1.7倍にも及びます。また大麻は1.5倍になると報告しています。文化的な違いはあり、日本ではこのままの数字は当て余らないかもしれませんが、リスクのあるものに手を出してしまう制御の困難な状態を作り出すという意味で、ACEから影響を受けることがわかります。

まとめ

本記事をまとめます。本記事では、逆境的小児期体験(ACE)と薬物使用の関連というテーマで、タバコ、アルコール、違法ドラッグ、大麻の使用との関連を調べたZhuらの研究をご紹介しました。ACEは上記の薬物いずれも使用のリスクを高めることが報告されています。

Zhu, J., Racine, N., Devereux, C., Hodgins, D. C., & Madigan, S. (2023). Associations between adverse childhood experiences and substance use: A meta-analysis. Child abuse & neglect, 106431. Advance online publication. https://doi.org/10.1016/j.chiabu.2023.106431