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以前、怒りっぽいとパニックが長引く?という記事を書きました。パニックと怒りには昔から関連が想定されており、ご紹介した研究では、怒りっぽさとパニックに悩む期間の長さに関連があることを見出していました。そのようにパニックに密接に関係のある怒りについて、別の視点で調べてみました。

怒りっぽさとパニックには、上記のような関係の他に、パニック発作と怒り発作の共通点があります。怒り発作とは、瞬間的に強い怒りが湧き起こし、激しい怒り行動を起こさせるものです。怒り行動には、他者への罵声、暴力、そして器物破損などが伴います。これは瞬間湯沸かし器に例えられるでしょう。「カッとなって殺してしまった」と殺人のニュースなどで耳にすることがありますが、社会的に大きな問題にもなりかねない状態です。幸福な人生を望む僕たちにとっては、必ず改善したい状態です。

今回は、著名な学者で臨床かである故Arthur Janov博士から、人間の発達と脳科学を踏まえた、「怒り発作」と「パニック発作」の共通した原因についてご紹介したいと思います。

原因は「脳幹」

Janov博士は、脳科学の研究から、独自のパニック療法を開発しています。その考えによると、怒り発作もパニック発作も、原因は脳幹の働きにあると説かれています。脳幹とは、脳の最下部にある下に突き出た(脊椎へとつながる)棒のようのな部位を指します。この部分は、脳の三層構造でいう「爬虫類脳」と呼ばれる部分です。生きる死ぬに関する処理を行っており、生きるための(死なせないための)身体の調整を行っています。体温の調整や心臓の動きの調整などがその例です。

赤ちゃんが産まれる際に、危険を体験することが、これら発作の原因であるとJanovは解いています。例えば、妊娠の時期にもよりますが、母親が過度のアルコールやタバコに含有する物質をたくさん摂取したり、また、出産の際に、麻酔を多量に使ったりすることが含まれます。これらにより、酸素の不足にさらされたり、呼吸が困難になり、胎児は生命の危機を体験しますその体験は生きるか死ぬかに関する脳幹に記憶されるとJanovは説明しています。

様々な状況により、多くの場合過度なストレスにさらされている状態で、これらの記憶に触れると、当時の窒息に関する生命の危機が再現されると、Janovは説明します。しかしそのような記憶は、思い出されるものではないので、思い出した人にとっては、説明のつかない危機の感覚に戸惑い、さらに焦っていくことで、パニック発作へとつながるのです。

パニック発作と怒り発作の共通点

脳幹の記憶に触れることによって、その危機に「戦うか」「逃げるか」の違いで、生じてくる状態は異なります。脳幹の記憶に触れた場合、トカゲが天敵のヘビに対峙した際、反応は戦うか逃げるしかありません。怒り発作やパニック発作が生じる際も同じです。これはいわゆる抑制可能な「怒り」や「怖さ」の域を大きく越えた、生きるためのエネルギーとなります。怒り発作の場合は、自分を脅かすもの全てを見境なく破壊するし、パニック発作の場合は、なんとかこの場から離れようと努めます。感情や考えとは切り離され、わたしたちが飼い慣らすべき内なる爬虫類が、暴走をしている状態です。過去に凶悪犯罪が続いた世代に対して「キレやすい」というレッテルが貼られましたが、怒り発作もパニック発作も非常に深刻な状態です。

パニック発作と怒り発作の解決法は?

Janovは、これらには解決法があると説きます。それは、怒り発作でいう激怒を、パニック発作でいう極度の恐怖を、意図を持って引き起こし、そして体験することです。それによって、秘められていた危機の記憶とそれに伴う戦うか逃げるかの反応が、脳の中で統合されていくと説明します。これは、常識に反する考え方だと思いますが、理にかなった方法です。

この解決法は、現代のトラウマ療法にも通じます。ただし、簡単に再体験することも、安全に再体験をし続けることも簡単なことではありません。NEXTカウンセリングでも取り入れているBrainspottingやTIPモデルで推奨する、トラウマの解決は、Janovの主張と同様に、トラウマを再体験することですが、安全に再体験をし、質づけられる方法です。

まとめ

本記事では、故Author Janov博士の理論をご紹介しました。パニック発作と怒り発作は、共に過去に体験された呼吸に関する生命の危機に触れた際に生じるものとされます。これは、生きるか死ぬかの状態で生き物がとる「戦うか逃げるか」の反応を促し、戦う場合は怒り発作、逃げる場合はパニック発作を発現させると説明しています。この解決のために、生命の危機となった記憶に触れ、そしてそれを再体験することで、脳に統合することが推奨されます。

Janov, A. The Origins of Anxiety, Panic and Rage Attacks. Act Nerv Super 55, 51–66 (2013). https://doi.org/10.1007/BF03379596