パニック障害と怒りっぽさとは関連があると言われています。カウンセリング経験から言っても、パニックを患う方は、他の状態の方と比較しても、怒りっぽさが強いと思えています。今回は、パニック障害と怒りっぽさについて、考えていきたいと思います。
怒りっぽさとパニック障害の関連
カウンセラー(以下Co):発作が起きた時のことを教えてもらえますか?
クライアント(以下Cl):電車の中で息苦しくなってきて、どうしようどうしようってなって。座り込みはしなかったけど、汗もかいていたし、きっと変なやつだと思われていたと思います。次の駅ですぐに降りました。
Co:息苦しくなってくる前は、何をしていましたか?
Cl:えっと、座っていたんですけど、混んでて、体の大きな人たちが乗ってきて、それで私が座っている目の前に立ったんです。両隣にも人がいるし前にもいるし、っていう感じになりました。
Co:大きな人たちが前に立って、どう思いましたか?
Cl:正直言うと、ムカつきました。私の前に立つなよ!って(笑)
パニック発作が起きた時の話を聞いていくと、そこには3〜4割のケースにおいて「怒り」の体験があります。そのような場合、上の架空のカウンセリング内の会話のように、怒りはパニック発作が始まるきっかけとなることがほとんどです。このように、怒りがパニック障害と何かしらの形で関連することは臨床家の間では知られていることです。そんな関連を調べる研究が、私(Taka心理学博士)に関連するチームによって行われましたので、ご紹介します。
怒り傾向とパニック障害の長さ
Sugayaら(2015)は413人のパニック障害に悩む患者を対象に、怒りっぽさとパニック障害を患う年数の関係を調べました。研究者たちは、まず被験者のパニック障害がどの程度続いているのかを調べました(下図)。そして、被験者をパニック歴が長いグループ(9年以上)と短いグループ(9年以下)に分け、2つのグループで怒りっぽさに違いがあるかどうかを分析しました。
そしてわかったのが、パニック歴が長いグループの方が、パニック歴が短いグループより、怒りっぽさが大きいということです(下図)。ずの左側が棒グラフ(黒)がパニック歴の長いグループを示しています。縦の長さは怒りっぽさの程度です。一方、右側の棒グラフ(白)がパニック歴の短いグループを示しています。縦の長さに違いが見られます。この違いには、統計的に意味のある違いがありました。つまり、怒りっぽさとパニック障害が維持される長さには関係が見られたと言うことです。
この関係は、2通りの説明ができます。1つ目が、怒りっぽい人はパニック障害が治るまで時間がかかる、と言うもの。もう1つが、パニック障害が(何かしらの理由で)長引いている人は、パニック障害のせいで脳機能が変化し、怒りっぽくなる、と言うものです。この研究からは、どちらの見方が正しいのかはわからず、さらなる研究が必要となります。
まとめ
本記事をまとめます。本記事では、パニック障害と怒りっぽさの関係について調べた研究をご紹介しました。パニック障害の歴が長い患者の方が、怒りっぽさが有意に強いという知見が見出されましたが、それは怒りっぽい人がパニックが長引くのか、パニックが長引いたので怒りっぽくなったのかは分かってはいません。今後の研究で明らかになっていくでしょう。