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パニック発作を表現する言葉として”out of the blue”(青天の霹靂:突然、思いがけず)というものがあります。パニック発作は突然起きてくるものである(ことが多くある)という意味で使われる言葉です。

予期された状況で起こる場合を除いて、発作が起きる場合は、突然起きるという感覚は否めません。突然起きると、びっくりするし、焦るし、余計に嫌な体験として終わっていくことでしょう。なので、いつ起きるのかだけでも分かれば、心の準備もでき、少しだけ嫌な気持ちも減ることは間違いありません。

そんなことをテーマとした予備調査がMcginnisら(2023)によって行われ、とても役立つ知見が見出されたのでご紹介します。

Mcginnisら(2023)は、パニック発作の予測が可能であるか調べました。パニック発作の予測として、彼らは古くからその関連が示唆されている心拍、そして環境音(うるささに着目し、日常生活の心拍/環境音(うるささ)と、パニック発作発現との間の関係を調べようとしました。被験者たちは、1ヶ月間の間、Apple Watchを使って測定された心拍と環境音のデータを毎週研究者に送り、研究者たちはそのデータを分析しました。

パニック発作と発作前日の心拍の関連

まず心拍とパニック発作の関係です。Mcginnisらがまとめたグラフを使って解説します。

このグラフは、パニック発作の起きやすさ(縦)と1日の平均心拍との差(横)を示しています。例えば一番左の棒は、1日の平均心拍より5以上低い場合、平均的な心拍の1日より翌日パニック発作を2倍以上起こしやすいことを示しています。同じように全ての棒を読み取ると、平均的な心拍(平均から±1)より低くても高くても、パニック発作が起こりやすくなることが分かります。特に心拍が平均より1以上高くなると、発作はおおよそ2.5倍ほど起きやすくなることが示されています。

次のグラフは、ある被験者の例です。上に行くほど、その日の心拍が平均よりも高いことを示します。横軸は日付です。2022年4月10日を見てみると、平均的な心拍よりも3高く翌日(11日)に発作を起こしたことを示しています。このようにみると、心拍が平均より3以上の高い場合は全て翌日に発作が起きていることが分かります。

パニック発作と発作前日の環境音(うるささ)の関係

環境音(うるささ)とパニック発作の関係はどうでしょうか。同じようにMcginnisらがまとめたグラフを解説していきます。

縦が発作の起こりやすさ、横が音の大きさ(dB:デシベル)です。環境音のうるささと発作の起こりやすさには、はっきりとした関係があります。60dbが静かな乗用車や通常の会話ですから、それかそれ以上になると圧倒的に翌日に発作が起こる確率が上がります

こちらはある被験者の例です。縦が音の大きさ(dB:デシベル)横が日付です。大きな音にさらされた日(4月20日と25日:それぞれ71dBと66dB)の翌日に発作が起きています。

調査から言えること

Mcginnisらの予備調査(2023)から言えることは、心拍が平均から離れていたり環境音の大きい日を過ごすと、翌日にパニック発作が生じる可能性が高まるということです。ここから、パニック発作に悩む方が変えられる行動はいくつかあります。

  • 心拍の測定をする習慣を身につける
  • 心拍の測定結果から平均的な心拍の状態とそうでない状態とを見分ける能力を養う
  • 前日の心拍を鑑みて当日の行動を調整する
  • 環境音の調整を心がける
  • 前日の環境音を鑑みて当日の行動を調整する

いずれもパニック発作を予測(あるいは予知)とその対処に役立つ行動です。これらにより、発作をうまく対処できるとしたら、自己効力(自分は物事を達成できるという自信)を高めることになり、その積み重ねが、最終的に発作への執着の軽減や頻度の軽減につながると考えられます。

まとめ

本記事をまとめます。本記事では、Mcginnisらの予備調査を紹介しています。彼らは、日常生活の中で、突然起こるとされるパニック発作と心拍/環境音(うるささ)の関係を調べました。その結果、心拍が通常よりも低かったり高かったり、また環境音が大きければ大きいほど、翌日に発作が起こりやすいことがわかりました。この結果を参考にすると、心拍情報や環境音の体験を参考にして、翌日の行動を調整することが、発作の体験の対処と自己効力の向上につながると言えます。

McGinnis, E. W., Lunna, S., Berman, I., Loftness, B. C., Bagdon, S., Danforth, C. M., Price, M., Copeland, W. E., & McGinnis, R. S. (2023). Discovering Digital Biomarkers of Panic Attack Risk in Consumer Wearables Data. medRxiv : the preprint server for health sciences, 2023.03.01.23286647. https://doi.org/10.1101/2023.03.01.23286647