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パニック発作は「戦うか逃げるか」という危険が迫った際の体の反応です。逃げるか戦うかをするために、心拍を速め、身体全身に酸素を送り、筋肉が行動のために準備する状態です。こういう働きがあるので、パニック発作は、循環器系の動きに注目してしまう疾患であると言えます。
その性質上、パニックに悩む多くの方が、パニック発作を心臓の発作であると誤認することがよくあります。本記事では、パニック発作と、心臓の発作との違いについて説明したいと思います。
パニック発作とは?
パニック発作については、過去の記事を参考にしたいですが、①身体の強い興奮や鎮静②恐怖感、が特徴です。今回に趣旨に沿って心臓が関与する症状をいくつか挙げると次のとおりです。
- 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
- 胸痛または胸部の不快感
- 息切れや息苦しさ
このように、パニック発作の体験には循環器に関係する症状が伴います。特に「突然に」それらが生じるとしたら、怖いだろうし、焦っているので、「心臓が悪いのではないか」と思ってしまってもおかしくありません。では、心臓系の疾患で生じる発作はどのような体験なのでしょうか。
心臓の発作とは?
心臓の発作は、急性冠症候群とも呼ばれます。心臓の発作では、血管内のコレステロールなどがちぎれて固まったものを血栓と言いますが、血栓で冠動脈が詰まり、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなることで、パニック発作と似たような動悸、胸痛、息苦しさが起こると言われています。このため、血液の流れが活発になった運動中、あるいは運動の後に心臓の発作が起こりやすくなります。特に日頃から運動の習慣のない人は、予定の電車に乗ろうと、階段を駆け上る、降りるなどすることが、心臓発作のきっかけとなりやすいとされます。
パニック発作と心臓発作の違い
よく似た症状を引き起こすため、またパニック発作時は焦っていて冷静な判断ができないため、パニック発作と心臓発作を取り違えることもしばしばあります。しかし詳しく見ると、この2つには大きな違いがあります。どこが違うのでしょうか?
①発作のタイミングが違う
パニック発作と心臓の発作は、全く異なったタイミングで起きやすいです。パニック発作は安静時にも起きます。一方、心臓の発作は運動時に起きます。例えばソファーに寝そべって、体の活動が弱い時にも、パニック発作は起きます。それはパニック発作が起こる大きなきっかけは、考え、であるからです。考えにより、身体が興奮するのがパニック発作です。心臓の発作は、上記のように血管が詰まることで生じるため、運動時など血流が活発なときにより多く起こる傾向にあります。
②発作の継続時間が違う
もう1つの違いは、継続時間です。パニック発作は短い時間で終わります。臨床的な観察では、1分で終わることもありました。一方で、心臓の発作は時間の経過とともに症状が悪化していきます。
パニック発作と心臓の発作の症状の違い
いずれにしても、自己判断をせず医師の診察は必要になってきますが、両者の違いを知っていることは安心感へとつながり、そしてそれはパニック発作の頻度や程度の軽減につながります。以下、両発作の主な特徴を表としてまとめます。
パニック発作 | 心臓の発作 |
心拍の増加 | |
胸痛と広がる腕や肩の痛み | 胸の痛みと圧迫感 |
息切れや息苦しさ | 息切れや息苦しさ |
発汗 | 発汗 |
手の痺れ | |
気持ち悪さや吐き気 | |
気を失いかける | |
悪化する症状 | 軽減していく症状 |
安静時にも起きる | 運動時に起きる |
まとめ
本記事ではパニック発作と心臓の発作の違いについて述べました。パニック発作も心臓の発作も、似た循環器系の症状を起こしますが、大きく2つの点で異なります。1つ目は、いつ起きるかという点です。パニック発作は安静時にも起きるのに対して、心臓の発作は運動時に起きます。また2つ目の違いは、継続時間です。パニック発作は短時間で症状の軽減が生じるのに対して、心臓の発作は症状が悪化していきます。
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