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「駅のホームで怒鳴り合いをしているおじさんたちをみました。片方のおじさんは家族連れだったんですけど、小学校低学年くらいの女の子がいて、その子、固まっていました。それを見たら、ドキドキしてきて苦しくなってきたんです」

パニック障害を患うあるクライアントさんが体験しそうなフィクションですが、類似した話は多く聞きます。このフィクションは、パニック発作を起こす方、あるいはパニック障害を患う方に見られる、ある傾向を示しています。それは、パニックの人は人の気持ちがわかる、という古くから想定されていたパニックと共感性の関連です。

この関連に関して、過去の様々な研究をまとめて分析(メタ分析)した研究を見つけましたのでご紹介したいと思います。不安障害の雑誌に2023年掲載された教官と不安の関連に関するメタ分析(Nair等)です。

パニックと共感

Nair等は、まだ十分には研究されていないが、古くから考えられていた「共感性はパニックのリスクとなる」について調べました。パニックと①全般的な共感性②認知的な共感性、そして③情緒的な共感性の関連について、過去の研究をまとめて分析するメタ分析を3度行いました。

共感の研究では、共感を、相手の気持ちや考えが想像できるという「認知的な共感」と、相手の気持ちを感じられるという「情緒的な共感」の2つに分類することがよくあります。Nair等もこの伝統に沿って、パニックに苦しむ方と、これ等の2つの種類の共感について、それらの関係を明らかにしようとしました。以下その結果を示します。

パニックと認知的な共感

Nair等の分析によると、パニックと認知的な共感の関連は、統計的に有意ではあるものの「とても弱い」ことがわかりました。つまり、冒頭の例で言うと、パニックで悩む人は、女の子の気持ちや考えを想像できやすい人がやや多い、と言うことになります。

パニックと情緒的な共感

パニックと情緒的な共感には、より強い関連が見出されました。そして興味深いことに、集団主義の国出身の人たち(例えば日本含むアジア圏の国々に背景を持つ人たち)の方が、その関連が強いことも分かりました。つまり冒頭の例で言うと、女の子が感じているだろう気持ちを感じやすい人が、特にアジア出身(日本人など)のパニックに悩む人では多い、と言うことが言えます。情緒的な共感性はパニックのリスクであると同時に、人と共に生きる集団主義の国々(日本など)では、世渡りをするためのスキルともなることが考えられます。

まとめ

本記事をまとめます。本記事では、古くから関連が想定されていた「パニックと共感」の関係について調べた研究を紹介しました。パニックと情緒的な共感(相手と同じような気持ちを感じる)には、有意に関連が認められ、それは集団主義の国々出身の人たちで、さらに大きい関連があることがわかりました。共感性はパニックのリスクであると同時に、人と共に生きる集団主義の国々(日本など)では、世渡りをするためのスキルともなることが考えられます。

Nair, T.K., Waslin, S.M., Rodrigues, G.A., Datta, S., Moore, M.T., & Brumariu, L.E. (2023). A meta-analytic review of the relations between anxiety and empathy. Journal of anxiety disorders, 101, 102795 .