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本記事では、「そのトラウマは回復しうるのか」「回復するとしたら、どのようなプロセスをたどるのか」という問いに答えていきます。

結論から言えば、トラウマからの回復は十分に可能です。ただし、その回復は一直線に進むものではなく、段階的で、揺れ戻りを含んだプロセスとして理解される必要があります。

トラウマ回復の基本的な考え方

トラウマからの回復とは、「何もなかった状態に戻る」ことではありません。
より正確には、

  • トラウマ記憶が現在の生活を脅かさなくなる
  • 身体や感情が、今ここに適応的に反応できるようになる
  • 人とのつながりや、自分自身への信頼が徐々に回復する

このような変化が積み重なっていく過程を指します。

多くの研究や臨床経験から、回復プロセスにはいくつかの共通した要素があることがわかっています。本記事では、その中でも特に重要な3点、
①安全の確立、②安心感を取り戻すステップ、③回復は一直線ではないこと
について解説します。


① 安全の確立(安全な環境と人間関係)

トラウマとは、本質的に「安全が脅かされた体験」です。そのため、回復の最初の土台となるのは、安全の回復です。

ここで言う安全とは、単に「危険な出来事が起こらない」という物理的な安全だけではありません。

  • 身体的安全(暴力や脅威がない)
  • 心理的安全(否定・批判・支配されない)
  • 対人的安全(傷つけられない関係性)

これらがある程度確保されてはじめて、心と身体は「警戒を緩める」ことができます。

トラウマ症状が強い時期には、本人が安全だと頭で理解していても、身体は依然として危険に備え続けています。そのため、周囲から見ると「過剰反応」「考えすぎ」「気にしすぎ」に見える反応も、本人にとっては安全を守るための必死な適応です。

回復の第一歩とは、この適応を無理にやめさせることではなく、
「もう過剰に警戒しなくても大丈夫かもしれない」
と身体が感じられる状況を少しずつ増やすことです。

そのため、安全な環境と、少なくとも一人の「安全な他者」の存在が、回復において極めて重要になります。

② 安心感を取り戻すステップ

安全が確立されると、次に徐々に育ってくるのが安心感です。
安全と安心は似ていますが、厳密には異なります。

  • 安全:危険がない状態
  • 安心:危険がないことを身体が感じ取れている状態

トラウマ体験後は、危険が去っても、身体はそれを信じられません。そのため、安心感は「教え込む」ものではなく、体験を通じて回復していくものです。

安心感を取り戻すプロセスでは、以下のような小さな体験が積み重なります。

  • 誰かに話しても否定されなかった
  • 強い感情が出ても、関係が壊れなかった
  • フラッシュバックが起きても、必ず終わった
  • 不調な日があっても、生活が完全には崩れなかった

これらは一見些細に見えますが、トラウマを負った神経系にとっては非常に重要な学習です。

特に重要なのは、「強い感情や身体反応が出ても、致命的なことは起きなかった」という経験です。これを繰り返すことで、身体は徐々に、「感じても大丈夫」「今は生き延びなくてもいい」と学習していきます。

心理療法やカウンセリングが有効に機能するのは、こうした安心感の体験が、意図的に、かつ安全に繰り返される場を提供できるからです。

③ 回復は「一直線」ではないこと

トラウマ回復について、最も誤解されやすい点がここです。回復は、良くなっていくだけの直線的な過程ではありません

多くの場合、

  • 良くなったと思ったら、突然しんどくなる
  • 以前は平気だったことが、急に辛くなる
  • 「逆戻りしたのではないか」と感じる時期がある

といった揺れ戻りが生じます。

これは回復の失敗ではありません。むしろ、回復が進んでいるからこそ起こる現象であることも少なくありません。

安全や安心がある程度確立されると、これまで凍結されていた感情や記憶が、表に出てくることがあります。これは、心と身体が「今なら扱える」と判断した結果です。

重要なのは、この揺れを
「またダメになった」
「自分は回復できない」
と解釈しないことです。

回復とは、症状が消えることではなく、症状との関係性が変わることとも言えます。

苦しさが出ても、それに飲み込まれず、やり過ごし、また日常に戻れる。この往復運動そのものが、回復プロセスなのです。

トラウマ回復における希望について

トラウマは確かに、人生に深い影響を与えます。しかし同時に、多くの人が、回復の過程で次のような変化を経験します。

  • 自分の限界や感情に対する理解が深まる
  • 他者との関係に慎重さと温かさが生まれる
  • 人生の優先順位や価値観が再編成される

これらは「トラウマが良かった」という意味ではありません。しかし、トラウマ体験が人生を決定づけるものではないという事実を示しています。

回復とは、「元に戻る」ことではなく、傷を抱えたままでも、生きられる世界を取り戻すことなのです。

本章のまとめ

本章では、トラウマからの回復プロセスについて解説しました。

  • 回復の第一歩は、安全な環境と人間関係の確立である
  • 安心感は、体験を通じて徐々に取り戻される
  • 回復は一直線ではなく、揺れ戻りを含む自然な過程である

トラウマは深い傷を残しますが、回復の可能性もまた、確かに存在します。次章では、こうした回復を支える具体的なケアや支援の在り方について、さらに詳しく見ていきます。