誰しも、苦しい体験のあとに「あの不安がまたやってくるのでは…」と心の準備もなく不安に襲われたことがあるかもしれません。今回は、発作後に強まる“予期不安”とは何か、その悪循環のメカニズムと、少しでも楽に生きるためのヒントを専門的視点を交えて探ってみたいと思います。
目次
1. 予期不安とは
予期不安とは、「またあんな状況になるかもしれない」と未来の不安に囚われる心理状態を指します。典型的にはパニック発作を経験した後に、「また発作が来るかも」という思いが頭から離れなくなり、日常的なストレスや緊張感を常に維持してしまう状態です。
2. なぜ発作後に強くなるのか?
① 脳と心の関係
発作体験は、大きな恐怖とともに扁桃体を過剰に刺激し、「危険信号」である交感神経優位の状態を強く記憶させます。結果的に、些細な生理反応(心拍や息苦しさ)にすら「危険」と感じやすくなり、再発を予感しやすくなるのです。
② 悪循環の構造
- 小さな身体反応(例:胸の圧迫感)
- やがてそれが「発作の兆候では…?」と予測
- 予測から緊張が高まり、本当に発作に
この連鎖は、事前の心的過敏さによって無意識に引き起こされがちです。
3. 予期不安がもたらす影響
- 生活範囲の制限
「安心できる場所」から出られなくなる。旅行や外出にも不安を感じるように。 - 慢性ストレス状態
不眠・食欲不振・抑うつ傾向。自律神経が乱れることで心身に悪影響が広がります。 - 自己肯定感の低下
「また不安になる自分は弱い」「どうしてコントロールできないんだろう」と、自責の念に苛まれやすくなります。
4. 悪循環を抜け出すために
(1) 身体反応への再認識
「これは発作ではなく、ただの緊張や息苦しさ」と少し距離を取って認識する練習が有効です。呼吸法や軽いストレッチが効果的です。
(2) 認知行動アプローチ
不安な思考に「本当にそうか?」と問い直す。たとえば「息苦しい=発作」と捉えるのではなく、「息苦しいだけ」とラベリングし直すことで、負の思考ループを断ち切ります。
(3) 日常的セルフケア
睡眠・栄養・軽運動・信頼できる人との対話など、身体と心を日常的に整える習慣を意識的に取り入れましょう。これは、そもそものストレスレベルを下げ、再発予防に効果的です。
(4) 専門的なサポート
不安に圧倒されそうなときは、カウンセリングや認知行動療法(CBT)、Brainspottingなど、プロの介入を受けることで自己完結を超えた支えとなります。
5. まとめ
予期不安は、苦しい体験後に心の回避本能として現れる自然な反応です。しかし
- 脳と身体がつくりだす誤った“危険信号”
- それに反応し続ける悪循環
- 日常生活や自己肯定への悪影響
という負のループにハマりやすいのもまた事実です。
それを断ち切るためには
- 身体反応を再認識する力
- 不安な思考を「問い直す」認知的姿勢
- 日常のセルフケアと専門サポート
これらを少しずつ積み重ねること。完璧でなくていい。小さな「安心できる瞬間」を重ねていけるように、寄り添う形での言葉がけや方法の選択をしていけたら、本来のあなたらしい生活に近づけるはずです。